カーエアコン(A/C)総合診断 & PAGオイル管理マニュアル

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STEP 0診断の前提条件と測定環境の設定

正確な圧力・風量・温度測定を行うため、必ず以下の条件を整えて診断を開始

項目 設定・操作手順 備考・理由
A/C スイッチ ON(A/Cランプ点灯確認) マグネットクラッチ/可変容量制御の作動
設定温度 MAX COOL(最低温度設定) エアミックスドアを全冷側に固定
風量設定 風量 MAX(最大) エバポレーター熱負荷を最大化
吸気モード RECIRC(内気循環) 外気温の影響を排除し再現性を確保
吹き出し口 FACE(顔向き / 中央吹き出し口) 風速および吹き出し口温度測定用
エンジン状態 暖気後 1,500 〜 2,000 rpm 維持 コンプレッサー回転数を安定化させる
ドア・窓 全開(またはフロント両ドア全開) 連続した熱負荷を与えるため
STEP 1風量・通風系の定量測定と診断

中央吹き出し口に風速計を垂直に当てて風速を測定します。

【判定 1-A】 風速 0 m/s (ブロアモーター完全不作動)
【判定 1-B】 風速 1.0 〜 3.5 m/s 以下 (風量が著しく弱い)
【判定 1-C】 風速 4.0 〜 6.0 m/s 以上 (風量は正常) ➔ STEP 2(圧力診断)へ進む
STEP 2マニホールドゲージによる圧力パターン別診断

【標準値目安(外気温25℃〜35℃)】 低圧(LO):0.15 〜 0.25 MPa / 高圧(HI):1.35 〜 1.60 MPa

圧力パターン 低圧(LO) / 高圧(HI) 挙動 想定原因・診断根拠 処置・作業手順
パターン ①
両方極端に低い
低圧: 0.05 MPa 以下
高圧: 0.80 MPa 以下
冷媒(ガス)不足・ガス漏れ
システム内のガス量が著しく不足。
リークテスター/UV蛍光剤で漏れ箇所特定。漏れ修復後、真空引き・規定量充填を実施。
パターン ②
低圧が負圧
低圧: 0 MPa 以下(負圧)
高圧: 0.50 〜 0.80 MPa
サイクル内の詰まり(閉塞)
エキバブやレシーバーの凍結・ゴミ詰まり。
エキスパンションバルブおよびレシーバー/ドライヤーの交換。システム洗浄と真空引き。
パターン ③
高低圧差なし
低圧: 0.40 MPa 以上(高)
高圧: 1.00 MPa 以下(低)
コンプレッサー圧縮不良
内部バルブ破損・ピストン摩耗で圧縮不可。
コンプレッサー本体交換(リビルト品推奨)。金属粉飛散時はサイクル洗浄または部品同時交換。
パターン ④
両方異常に高い
低圧: 0.30 MPa 以上(高)
高圧: 2.00 MPa 以上(高)
コンデンサー冷却不足 または ガスの過充填 または A/Cオイル過充填 1. コンデンサーファン電動モーター作動・フィン目詰まり確認。
2. サイトグラス確認(気泡ゼロ・過充填疑い)。
3. 規定量に回収・真空引き・正確量再充填。
パターン ⑤
圧力は正常
低圧: 0.15 〜 0.25 MPa
高圧: 1.35 〜 1.55 MPa
圧力正常だが冷えない
電気系、サーミスタ制御、またはエアミックス不良。
STEP 3(電気・サーミスタ診断)およびSTEP 4(A/Cオイル量管理)へ進む。
STEP 3エバポレーターサーミスタ(温度センサー)の抵抗値診断と不具合

圧力も風量も正常なのに冷えが悪い、または走行中に急に風が出なくなる・ぬるくなる場合、エバポレーター温度センサー(サーミスタ)の特性ズレや断線・短絡が原因です。

【エバポレーターサーミスタの役割】
エバポレーターの表面温度を監視し、0℃付近での氷結(凍結)を防ぐためにコンプレッサーのマグネットクラッチ(または容量制御弁)をOFF/ONコントロールします。

■ 標準的なサーミスタ抵抗値特性(NTCサーミスタ: 負温度係数)

エバポレーター温度 標準抵抗値目安 制御信号
0 ℃(氷結限界) 約 4.5 〜 5.0 kΩ A/C OFF(クラッチ切)
10 ℃ 約 2.8 〜 3.2 kΩ A/C ON(クラッチ入)
25 ℃(常温) 約 1.5 〜 1.8 kΩ A/C ON(クラッチ入)
【サーミスタ不具合による2大トラブル】
  1. 固定高抵抗化(または断線): ECUは「エバポレーターが極寒(氷結状態)」と誤認 ➔ コンプレッサーが一切ONにならない(冷えない)。
  2. 固定低抵抗化(またはショート): ECUは「エバポレーターが常に暖かい」と誤認 ➔ コンプレッサーが止まらずエバポレーターが氷結。風量が急激に落ち、氷が溶けると再び風が出るを繰り返す。

■ サーミスタ診断手順:

  • サーミスタカプラーを外し、テスターで端子間抵抗を測定。
  • 氷水(0℃)につけた際「約5kΩ」、手で温めた際「1.5kΩ付近」になだらかに変化するか確認。変化しない・断線(∞Ω)は即交換。
STEP 4R134a/PAGオイル 部品交換時 オイル補充量・管理ガイド

パーツ交換時のPAGコンプレッサーオイル追加目安と実務規定データです。

■ 1. 交換部品別のオイル補充目安一覧

交換部品 オイル補充目安 主な保持・残留理由 作業時の注意事項・実務ポイント
コンプレッサー 規定量の50〜100%
(要・実測調整)
全オイルの50〜60%がボディ内部・ギャラリーに滞留。 新品は事前にオイル封入済の場合が多い。抜き取り量と同量を新品から調整して載せ替える。
エバポレーター 30 〜 50 ml 内部フィン・コア表面積が大きく油膜・滞留が多い。 室内側の大きな熱交換器のため補填量は高め。ダッシュボード降ろし作業時は確実に追加。
コンデンサー 10 〜 15 ml フロント放熱コア内部の配管内壁に付着。 レシーバー一体型の場合は合計量(20〜30ml)で管理。同時交換時は合算が目安。
レシーバー/ドライヤー 10 〜 15 ml 乾燥剤(シリカゲル等)およびフィルター部に吸着。
高低圧ホース/配管(1本) 5 〜 10 ml ゴムホース・アルミパイプ内壁への薄い油膜付着。 長尺配管や複数本交換時は本数に応じて積算。
エキスパンションバルブ 0 〜 5 ml 内部流路の僅かな付着のみ。 単体交換時は基本的に追加不要(Oリング保護塗布のみ)。
Oリング / パッキン類 0 ml 系統内オイル減量なし。 補充は不要。組み付け時に新品OリングへPAGオイルを微量塗布して傷・咬み込みを防止。

■ 2. 車種タイプ別 システム全オイル規定量(完全空腹時)

車両区分 / エアコン仕様 全オイル規定量 該当例・備考
軽自動車(バモス、キャリイ等) 60 〜 80 ml シングルA/C。配管容積が小さいため過剰注入に注意。
普通乗用車(シングルA/C) 80 〜 120 ml セダン、コンパクトカー、SUV等(リアA/C無し)。
大型ミニバン / ツインA/C 120 〜 180 ml フロント+リアのデュアル仕様。配管長が非常に長い。
■ 複数部品同時交換の計算例(軽バモス等)
コンデンサー (10〜15ml) + レシーバー (10〜15ml) = 合計 20 〜 30 ml を補充
※複数交換時も、合計がシステム全オイル量(軽の場合約70ml)を超えないよう配慮。
■ 整備上の必須チェック事項
  • オイル種類の適合: R134aには必ず適合PAGオイル(例: ND-OIL 8 / PAG46等)を使用。POE等の異種混入はゲル化・焼付きの原因。
  • 過剰(オイルオーバー)の弊害: 熱交換器内に厚い油膜が張り冷えが悪くなるほか、最悪コンプレッサーの液圧縮損傷を招く。
  • 実測原則: 外した部品からの排出量をメスシリンダーで計測し「排出実測量 + 5ml」を補充するのが最も確実。
STEP 5エアコン総合診断ロジック(フローチャートまとめ)
【不具合受付:冷えない / 風が出ない / 効きが悪い】

├─► [CHECK 1] 風量計測定(STEP 1)
│ ├─► 風速 0 m/s ➔ 電源・リレー・ブロアモーター・レジスタ点検
│ ├─► 風速 3.5 m/s 以下 ➔ フィルター目詰まり・エバポレーター目詰まり・ダンパー不良
│ └─► 風速 4.0 m/s 以上 (OK) ➔ [CHECK 2] 圧力測定へ

├─► [CHECK 2] マニホールドゲージ圧力測定(STEP 2)
│ ├─► 低圧↓ / 高圧↓ ➔ ガス漏れ・冷媒不足 ➔ 漏れ箇所修復・真空引き・規定量充填
│ ├─► 低圧(負圧) / 高圧低下 ➔ エキバブ/ドライヤー詰まり ➔ 詰まり部品交換
│ ├─► 低圧↑ / 高圧↓(差なし) ➔ コンプレッサー圧縮不良 ➔ コンプレッサー交換
│ ├─► 低圧↑ / 高圧↑ ➔ コンデンサー冷却不良 or ガス/オイル過充填 ➔ ファン点検・規定量再充填
│ └─► 低圧・高圧ともに正常値 (OK) ➔ [CHECK 3] 電気・制御・オイル診断へ

└─► [CHECK 3] 圧力正常時の原因特定(STEP 3 & STEP 4)
├─► エバポレーターが凍結する / 急に風が止まる ➔ サーミスタショート(固定低抵抗)
├─► 圧力正常だがコンプレッサーが入らない ➔ サーミスタ断線/高抵抗 or マグネットクラッチ隙間過大
└─► 冷えが鈍い・圧力が不規則・過去に添加剤多数注入 ➔ A/Cオイル過充填(油膜による熱交換阻害) ➔ フラッシング・規定量充填